Software Product Description ================================================================================ 日本語VMS Version 5.4 ソフトウェア仕様書 SPD 25.C4.05 仕様書の包含する範囲 この文書は,日本語VMS オペレーティング・システムのソフトウェ ア機能仕様を述べたものです。ここでは標準版VMSに追加・拡張さ れた日本語処理の機能仕様についてのみ記述していますので,標 準版に含まれている基本機能については「VMS Operating System Software Product Description(SPD 25.01.xx)」を参照してく ださい。 1 日本語処理の概要 日本語VMS ソフトウェアは,標準版VMS オペレーティング・システムを拡張 して,以下の諸領域での日本語の取り扱いを可能にしています。VMS の基本機 能を損なうことなく,追加機能として日本語処理を組み込んだものです。した がって,日本語VMS では標準版に含まれる機能はそのまま利用できます。周辺 装置や端末装置などの環境があれば,日本語を取り扱うことができますし,英 語の端末装置などからは,基本としている英語のままでVMS を利用できます。 ですから,日本語VMS のもとでは,英語と日本語の双方の処理が可能で,矛盾 無く混在できます。 ・ 日本語端末のドライバ・プログラム ・ ユーザ定義文字の作成・更新ユーティリティ ・ かな漢字変換用辞書(辞書メインテナンス・アクセス手法) ・ かな漢字変換ライブラリ(ユーザ・コーラブル・ライブラリ) ・ 言語プロセッサでの日本語処理(ランタイム・ライブラリ) ・ 日本語画面管理ライブラリ ・ 日本語エディタ/ ワードプロセッサ ・ 日本語電子メール ・ 日本語ソート/ マージ ・ 日本語プリント・ユーティリティ ・ 漢字プリント・シンビオント ・ その他の日本語処理用コマンド ・ 日本語DECwindows 1.1 日本語端末とドライバ <漢字文字セット> 日本語VMS では,DEC 漢字1983 年版漢字端末とDEC 漢字1978 年版漢字端 末を利用できます。1983 年版漢字端末では,JIS X 0208-1983 に準拠し た 6,877 字のDEC 漢字1983 年版文字セットとユーザ定義文字などのため の 8,836 字,合計15,713 字の文字セットを利用できます。1978 年版漢字 端末では,JIS C 6226-1978 に準拠した 6,802 字のDEC 漢字1978 年版文 字セットとユーザ定義文字などのための 8,836 字,合計 15,638 字の文字 セットを利用できます。 DEC 漢字文字セットの詳細については,「漢字コード表(AA-A056C-TE-JO)」 に記述してあります。 <端末装置> 漢字端末装置は2 種類あり,それぞれ内蔵するROM (固定記憶装置)の容量 が異なります。一つはJIS レベル1 に相当する文字フォントのみを内蔵し, JIS レベル2 およびユーザ定義文字を必要時に転送して用いるオンデマンド・ ローディング方式を採用しています。他の一つは,JIS レベル1 および2 に 相当する文字フォントを内蔵し,ユーザ定義文字などの追加フォントだけを初 期設定時に転送するイニシャル・ローディング方式を採用しています。なお, 後者の場合は,端末自身の設定により,オンデマンド・ローディング方式も可 能となっています。 ただし,オンデマンド・ローディング方式の場合は,ROM にない文字を最初に 利用したときに,フォント・データ転送のために,わずかながら応答が遅れる ことがあります。 以下の端末装置は,JIS レベル1 に相当する文字フォントを内蔵していま す。 ・ 漢字ディスプレイ・キーボード端末: VT80-AA, VT80-AB VT80-EA, VT80-EB VT282-EA ・ 漢字印刷装置: LA80-AA, LA80-AB LA84-AA, LA84-AB LA84-AC, LA84-AD 以下の端末装置は,JIS レベル1 および2 に相当する文字フォントを内蔵し ています。 ・ 漢字ディスプレイ・キーボード端末: VT80-AC, VT80-AD VT80-EC, VT80-ED VT282-FA, VT284-FA VT286-FA, VT382-FA ・ 漢字印刷装置: LA84-BA, LA84-BB LA84-BC, LA84-BD LA86-AA, LA86-AB LA280-AA, LA280-AB LA380, LN80-AA, LN80-BA LN03S-JA, DEClaser 2300 なお,一部の端末装置は,導入後でもオプションでROM の追加が可能です。ま た,一部のDEC 漢字1978 年版漢字端末は,DEC 漢字1983 年版漢字端末に改 造することができます。上記端末装置に加えて, DECwindows対応として,次の端末装置がサポートされます。 ・日本語VT1200 <非同期式通信インターフェイス> 端末装置は非同期式通信方式でVAX システムに接続されます。日本語VMS で は以下の通信インターフェイスについて,文字フォントのオンデマンド・ロー ディング用のソフトウェア(ドライバ・プログラム)を提供します。 DZ11, DZ32, DMF32, DMZ32 DZQ11, DZV11, DHV11, DHQ11 MicroVAX 2000 Async port MicroVAX 3100 Async port CXY08, CXA16, DMB32, DHB32, DECserver 200, DECserver 300, DECserver 500/550 ただし,LN80,LN03, DEClaser 2300 漢字印刷装置,およびDECserver に接続された漢字印刷装置のオンデマンド・ローディングはサポートしていま せん。 これ以外の通信インターフェイスとコンソール・ラインに日本語端末を接続す る場合は,イニシャル・ローディング方式にて使用可能です。 <DECnet 環境での日本語の使用上の注意> DECnet においての日本語処理では,漢字データの転送(ファイル転送,タス ク間通信)およびリモート・ターミナル操作($ SET HOSTコマンド)が可能 です。ただし,DECnet を経由してのオンデマンド・ローディングはサポー トされていませんので,リモート・ターミナル操作には若干の注意が必要で す。すなわち,リモート・ターミナルで日本語処理を効果的に行うには,イニ シャル・ローディングを行うことをお勧めします。 <VAXcluster 環境での日本語の使用> VAXcluster では,各ノード間で漢字データを共有できます。また,コモ ン・システム・ディスクに日本語VMS をインストールすることも可能です。 ただし,VAXcluster 環境におけるリモート・ターミナル操作では,前項 の<DECnet 環境での日本語の使用上の注意>と同様の制限があり,他ノー ドのユーザ定義文字の使用は,イニシャル・ローディング方式で行います。 <端末およびコード系の互換性> DEC 漢字文字セットは,日本語VMS,日本語P/OS (Professional 300), および日本語ULTRIX-32 に共通で,互換性があります。したがって,これら のシステム間でのデータの受け渡しや端末エミュレーションを行う場合,漢字 コード系にかかわる問題はありません。 1.2 漢字プリント・シンビオント LA シリーズの漢字プリンタで拡張漢字を印字するために拡張されたプリン ト・シンビオントです。ホスト直結用とLAT 経由用の2 種の漢字プリント・ シンビオントがあります。接続コントローラの制限やプリンタの登録可能文字 数による制限もありません。 1.3 フォント・ユーティリティ ユーザ定義文字などのフォントを作成し維持更新するためのユーティリティと して以下のものがあります。 FDESIGN/FEDIT フォント・エディタ FUPDATE フォント・データベース更新 プログラム CTABLE 漢字コード表印刷プログラム PRELOAD イニシャル・ロード用ファイ ル作成プログラム 1.4 かな漢字変換用辞書 かな漢字変換を行うための辞書として,一般的な国語辞書に人名および地名を 加えた約10 万語を備えたものを提供しています。辞書は,かな漢字変換ライ ブラリを利用することによってユーザ・プログラムからも簡単にアクセスでき ます。システムに一個の辞書(マスター辞書)に加えて,利用者ごとにその利 用者の参照した単語だけを抜き出して保有する個人辞書(ユーザ辞書)機能が あります。通常のかな漢字変換はこのメカニズムから,主としてマスター辞書 を利用し,個人辞書はユーザが登録した単語や,自動的に学習された単語を記 録し,変換効率を上げる目的で使われます。 1.5 かな漢字変換ライブラリ かな漢字変換(ローマ字漢字変換を含む)にかかわる各種操作を行うサブルー チン・ライブラリを提供します。このオブジェクト・ライブラリはVMS の標 準のコーリング・シーケンスを用いており,各種のソフトウェアから呼び出し て利用することができます。FORTRAN, COBOL, PASCAL, C 言語, マクロア センブラ, BASIC, PL/I, BLISS, LISP, DSM などの言語でプログラムを 作成する場合,ライブラリをコールして,かな漢字変換操作を行ったり,かな 漢字変換付のデータ入力操作を行うことができます。かな漢字変換ライブラ リは,日本語VMS の各種アプリケーション・ソフトウェアで統一的に利用して います(辞書の内容が共通に利用できます)。ライブラリの構成内容は日本語 P/OS や日本語ULTRIX-32 との互換性を考慮しています。 1.6 言語プロセッサでの日本語処理 プログラミング言語での,日本語データの取り扱いが可能です。プログラミン グ言語への漢字の応用は,使いやすい直接的な方法を採用しています。すなわ ち日本語エディタで漢字リテラルやコメントをそのまま記述し,言語処理系に つなげる方式で,特別の前処理系などを使わないため,効率的で簡単です。以 下の言語プロセッサでは,注釈(コメント)および文字リテラル(“日本語” など)に,漢字を利用できます。かな漢字変換ライブラリを用いて,かな漢字 変換付の入力処理を行うことも可能です。日本語VMS におけるこれらの手法に ついては,日本語P/OS や日本語ULTRIX-32 との互換性を考慮しています。 VAX FORTRAN, VAX COBOL, VAX BASIC, VAX PASCAL, VAX C, VAX DSM, VAX PL/I, VAX BLISS-11, VAX BLISS-32, VAX LISP, マクロアセンブラ 各言語処理プロセッサでの漢字の利用事例や一部の文法的制約は,「日本語ラ イブラリ利用者の手引き」に記述してあります。 1.7 日本語画面管理ライブラリ(日本語SMG) 標準版SMG に日本語処理機能を拡張したバージョンです。標準版SMG で日本 語の文字を使用した場合,文字衝突(いわゆる文字化け)が起こる可能性があ りますが,日本語SMG では,未定義文字の概念を適用することにより,衝突を 処理します。 1.8 日本語エディタ/ ワードプロセッサ 日本語エディタ(JEDIT)は,VMS 標準エディタであるEDT にかな漢字変換 機能を追加したものです。EDT の多機能性や効率性の良さを活かして,プログ ラム開発などの環境での日本語を含む編集に利用できます。日本語ワードプロ セッサは,主として文書を入力する上での操作の簡単さに主眼をおいて作られ ています。作成されたプログラムや文書は,日本語電子メールはじめ各種のソ フトウェア・コンポーネントでそのまま利用できます。エラー・メッセージや ヘルプ・メッセージは日本語化されています。 1.9 日本語VAXTPU 日本語VAXTPU は,VAXTPU に日本語処理機能を追加したものです。日本語 VAXTPUは,高性能でプログラマブルなテキスト処理用のユーティリティで, マルチ・バッファ,マルチ・ウィンドウ,サブプロセス機能など数多くの特 徴があります。日本語VAXTPU 言語を使って,インタラクティブなユーザ・イ ンターフェイス(エディタなど)を容易に作成することができます。日本語 VAXTPU には標準として,高度な日本語編集機能をもつエディタ,日本語EVE が用意されています。日本語EVE には,いままでEVEJ を使っていたユーザの ために,EVEJ エミュレーション機能があります。 1.10 日本語電子メール VMS Mail に日本語処理を追加したものです。基本機能はVMS Mail と同じで す。DECnet ネットワークで連結されたシステム・コンプレックスでは,シ ステム間での日本語メールを送受信できます。この場合,ネットワークの中の VMS は,必ずしも日本語VMS であることを必要としません。エラー・メッセー ジやヘルプ・メッセージは日本語化されています。 1.11 日本語ソート・マージ VMS SORT/MERGE に以下の機能を追加・拡張したものです。SORT/MERGE の コレーティング・シーケンス処理に,漢字特有の性質を考慮しています。 ・ 音読み順ソート/ マージ ・ 訓読み順ソート/ マージ ・ 部首コード順ソート/ マージ ・ 総画数順ソート/ マージ ・ 国語辞典方式ソート/ マージ 国語辞典方式では,ふり仮名フィールドに全角または半角文字を使用すること ができます。 1.12 日本語プリント・ユーティリティ 通常の印刷コマンドを日本語文書の取り扱いのために拡張したものです。以下 の機能を含みます。 ・ 縦書き/ 横書き印刷 ・ 行間ピッチの指定/ 文字間ピッチの指定 ・ 上部/ 下部および左側余白の指定 ・ ページ付けの指定 ・ SIXEL形式イメージ・データ出力の指定 1.13 日本語VMSL 日本語VMSL (VMS ローカル言語)は,VMS オペレーティング・システムの メッセージおよびヘルプを日本語で参照できるようにするユーティリティで す。日本語VMSL が提供する機能は次のとおりです。 ・ いくつかのVMS コマンドとユーティリティの日本語に翻訳されたメッ セージとヘルプを提供します。 ・ 使用したい言語を選択するためのコマンドを提供します。 日本語VMSL では,プロセスごとに使用する言語を選択することができます。 システムにログインした状態では英語に設定されています。 1.14 日本語VMS テーラリング 日本語VMS テーラリング・ユーティリティは,日本語VMS をインストールし たシステム・ディスクに,新たに日本語VMS ファイルを追加する,または,削 除することを可能とします。追加または削除する日本語VMS のファイルは,ク ラス(機能単位)あるいはサブクラス(クラスの中のユーティリティ単位)で 指定することができます。 1.15 その他の日本語処理ユーティリティ VMS のINQUIRE コマンドの日本語版であるKINQUIRE は,日本語を含むDCL コマンド・プロシージャなどに利用できます。DUMP コマンドの印刷表示部分 に日本語を拡張したKDUMP は,日本語データのチェックに効果的です。日本 語文書作成や電子メールを初心者にも使い易くした,日本語メニュー・サブシ ステムが追加されています。漢字コードを各種のものに変換するKCODE ユー ティリティは,JIS 漢字コードやCP/M 漢字コード,MS/DOS 漢字コード,さ らに主要なコンピュータ・ベンダー独自のコード系(IBM社,富士通,日立各 社のM シリーズ用漢字コード系,日本電気(各種)コード系)からの,または それらへの,漢字コード変換を行います。変換テーブルに従って漢字コードを 変換するKCONVERT は,主に,DEC 漢字1978 年版から1983 年版への変換ま たはその逆の変換に使用します。DEC 漢字1978 年版から1983 年版への変換 またはその逆の変換に用いる変換テーブルは日本語VMS に含まれています。リ リース・キットは日本語のサンプル類と説明文書などを含んでいます。 1.16 日本語DECwindows 日本語DECwindows は,標準版VMS DECwindows の日本語版であり,ワーク ステーションにおいて,一貫したスタイルの新しいユーザ・インターフェイス を提供します。 日本語DECwindows は,次に示すコンポーネントから構成されています。 ・ 日本語ディスプレイ・サーバ ・ 日本語フォント/フォント・ファイル変換ユーティリティ ・ 日本語ツールキット・ライブラリ ・ 日本語アプリケーション - セッション・マネージャ - ウィンドウ・マネージャ - ファイルビュー - 漢字端末エミュレータ - 電子メール - カード管理 - カレンダ - 時計 - 電卓 - CDA ビューア - ノートパッド - ブックリーダ - ペイント - パズル <日本語ディスプレイ・サーバ> 標準版のディスプレイ・サーバの基本機能に加えて,かなキーボード(LK201-AJ) をサポートします。クライアント・アプリケーションは,Xlib の XLookupString 関数を使用して KANA Keysym を受け取ることができます。 <日本語フォント/フォント・ファイル変換ユーティリティ> ワークステーション上で日本語を表示するためのフォントとして,4 種類 の大きさの異なる漢字フォントを提供します。また,フォント・エディタ (FDESIGN/ FEDIT)で作成したユーザ定義文字のフォントをワークステー ション上で使用可能な形式に変換するフォント・ファイル変換ユーティリティ を提供します。 <日本語ツールキット・ライブラリ> 日本語XUI ツールキットは,XUI ツールキットをベースにして日本語機能を より利用しやすくするためのライブラリです。このライブラリを使用すること により,日本語表示およびかな漢字変換入力が可能です。 <日本語アプリケーション> 次に示すアプリケーションで,日本語機能を提供します。 ・ セッション・マネージャ DECwindowsワークステーションに対するトップ・レベルのユーザ・イン ターフェイスを提供するものであり,ファイルビューおよび漢字端末エ ミュレータの起動,セッション全般に渡るユーザ環境の設定,画面の印 刷等の機能が提供されます。セッション・マネージャでは,メッセージ・ ウィンドウ領域に日本語を表示することができます。 ・ ウィンドウ・マネージャ ウィンドウを管理/制御するための各種機能を提供します。ウィンドウの タイトル・バーおよびアイコンに日本語を表示することができます。 ・ ファイルビュー ワークステーションにおけるVMS オペレーティング・システムの新しい インターフェイスを提供するものであり,システム・コマンドの実行や DECwindowsアプリケーションの起動等を行うことができます。ファイル ビューが提供するメニューを変更することもできます。 ・ 漢字端末エミュレータ VT382 漢字端末をエミュレートします。日本語文字セットを扱うことが でき,VT382 漢字端末上で動作するほとんどすべての日本語ソフトウェ アを,変更を加えずに動作させることができます。 ・ 電子メール DECwindows の標準的なユーザ・インターフェイスを介して,VMS Mail の基本機能を使用することができます。 ・ カード管理 オンラインの住所録等のように,情報を階層的に管理し,参照することが できます。 ・ カレンダ スケジュール/時間の管理を支援します。 ・ 時計 アナログ/ディジタルで日時を表示します。 ・ 電卓 簡単な演算機能を提供します。 ・ CDAビューア DDIF, DTIF, PS, TEXTの各フォーマットのドキュメントを画面に表示 します。ただし,PS では日本語を含む文章を表示することはできませ ん。 ・ ノートパッド 簡単に使用できる日本語テキスト・エディタです。 ・ ブックリーダ 目次や索引を使って,ドキュメントをオンラインで読むことができます。 現在提供しているオンライン・ドキュメントは英語版だけです。 ・ ペイント 図や絵を作成/編集することができます。 ・ パズル 単純なゲームです。 2 ハードウェア環境 2.1 必要