Software Product Description ================================================================================ 日本語DEC PHIGS/VMS Version 2.2 ソフトウェア仕様書 SPD 25.T8.02 仕様書の包含する範囲 この文書は,日本語DEC PHIGS/VMS のソフトウェア機能仕様を述 べたものです。日本語DEC PHIGS/VMS は,ISO とANSI で定めら れたPHIGS (Programmer's Hierarchical Interactive Graphics System,プログラマ用階層対話型グラフィックス・システム)を もとにDEC 社で開発された3 次元グラフィックス用サブルーチン・ パッケージです。 1 日本語DEC PHIGS/VMS の概要 1.1 特徴 (1) 階層的データ構造 PHIGS は,CSS (centralized structure store)と呼ばれるネット ワーク形式の階層的データ構造に図形データを格納します。格納した図形 データの要素単位に追加,削除,置き換えなどの編集が行なえます。 (2) バインディング ANSI/ISO PHIGS 標準では,FORTRAN バインディング,C バインディン グと呼ばれるFORTRAN およびC 言語からのPHIGS 関数の呼出し形式を定 めています。日本語DEC PHIGS/VMS は,この2 つのバインディングと, VMS の関数呼出し形式に基づくPHIGS$ バインディングを提供していま す。 PHIGS$バインディングは,VMS が提供する各種の言語(BASIC,C,FORTRAN,PL/I など)から呼出し可能です。 FORTRAN バインディングとPHIGS$バインディングは同じアプリケーショ ン内で混用できますが,C バインディングを他の2 つのバインディング と混用することはできません。 (3) 移植性と装置独立性 FORTRAN およびC バインディングの提供により,アプリケーション・プ ログラムの高度な移植性を実現します。また,アプリケーション・プログ ラムは,PHIGS の提供する機能を用いて,各種グラフィックスを統一的 に扱うことができます。そのため,極めて装置独立性の高いアプリケー ション・プログラムを作成できます。 (4) 拡張機能 PHIGS標準以外の拡張機能も提供されています。拡張機能には,隠線・ 隠面消去,ライティング,陰影付け,透視深度などを設定するための 機能や,円,円弧,三角形で構成した区画,四辺形メッシュ,指標多角 形,トリミングされたNURB,トリミングされないNURB (non-uniform rational B-splines)などを出力する機能などがあります。 (5) 日本語入出力のサポート アプリケーション・プログラムが文字列入力を行なう場合,かな漢字変換 を用いて,簡単に日本語入力ができます。また,文字列,注釈文字列出力 では,日本語の出力を行なうことができます。 (6) 豊富なストローク・フォント 英数字を主体とした24 種類のストローク・フォントに加えて,漢字スト ローク・フォント(JIS 第1,2 水準)が提供されます。 (7) デバイス・ハンドラ 日本語DEC PHIGS/VMS は,種々のグラフィックス装置をサポートしてい ます。これに加え,独自のグラフィックス装置を使用したい場合には, 日本語DEC GKS/VMS のデバイス・ハンドラ・インターフェイスを介し て,ユーザ自身のグラフィックス装置のハンドラを開発できます。詳細に ついては,別売の『 Building a DEC GKS Device Handler System 』マニュアル(注文番号: AA-MJ33A-TE)を参照してください。デバイ ス・ハンドラは,VAX FORTRAN,VAX C とVAX PASCAL で開発できま す。 (8) 実現されていない機能 ANSI/ISO PHIGS 標準の機能の中には,日本語DEC PHIGS/VMS バージョ ン2.2 で実現されていないものもあります。 実現されていない機能: ・ モデリング・クリップ ・ メタファイル ・ セル配列 ・ パターン ・ 増分空間検索 1.2 機能概要 (1) ストラクチャ 図形データを集中的,階層的に保持し,管理するために,ストラクチャ と呼ばれるデータベースが用意されています。このストラクチャは,出力 基本要素(折れ線,マーカ列など),出力属性,ラベル,アプリケーショ ン・データ,ネーム・セットの指定,座標変換の選択,ストラクチャ参照 などのストラクチャ要素で構成されます。アプリケーション・プログラム は,これらの要素を随時編集できます。ストラクチャに保存された図形 データは,ストラクチャ・トラバーサル機能により,グラフィックス装置 に表示されます。ストラクチャ・トラバーサルとは,ストラクチャ要素を 順番に解釈していくことです。 即時実行モードと呼ばれる別のトラバーサル機能も提供されています。 即時実行モードの場合,出力基本要素はストラクチャに置かれることな く,表示画面に直接送られ,表示されます。 (2) 座標変換機能 次の5 つの3 次元の座標系を用いて,3 次元図形が表現されます。 ・ モデリング座標系 表示図形を構成する各対象物独自の座標系 ・ 世界座標系 各モデリング座標系の相対的位置関係を表す座標系 ・ ビュー基準座標系 視点を原点とした投影を行なうための座標系 ・ 正規化投影座標系 正規化された投影座標系 ・ 装置座標系 装置に依存した座標系 モデリング座標系から装置座標系までの一連の座標変換を変換パイプライ ンと呼びます。変換パイプラインには,次のものがあります。 ・ 複合モデリング変換 モデリング座標系から世界座標系への変換 ・ ビュー方向変換 世界座標系からビュー基準座標系への変換 ・ ビュー投影およびクリッピング変換ビュー基準座標系から正規化投 影座標系への変換 ・ ワークステーション変換 正規化投影座標系から装置座標系への変換 (3) 制御機能 PHIGSの初期化および終了,グラフィックス装置のオープン,クローズ などの制御機能があります。 (4) 出力機能 2 次元と3 次元両方のグラフィックス要素をストラクチャ中に作成する機 能を備えています。出力機能の中には,ライティング,陰影付けに関する 属性を付加できるものもあります。以下に,これらの機能を示します。 ・ 折れ線 指定した各座標点を線分で結ぶことにより,折れ線を表示します。 ・ マーカ列 指定した各座標点にマーカを表示します。 ・ 文字列 文字列を描きます。文字を様々なフォントと向きで表示できます。 文字の大きさは変換の影響を受けます(漢字フォント選択時には, 漢字コードを指定できます)。 ・ 領域 ホローまたは,単一色かハッチで塗りつぶされた閉多角形領域を表 示します。 ・ 領域セット 閉多角形領域の集合を表示します。この出力基本要素では,辺の属 性が変更できます。 ・ 相対注釈文字列 常に読み取りが可能なように,X-Y 平面に文字列を表示します。文 字を様々なフォントと向きで表示できます。文字の大きさは,変換 の影響を受けませんが,文字の出力位置は影響を受けます(漢字 フォント選択時には,漢字コードを指定できます)。 ・ 円と円弧 Z=0 の平面において,円または円弧を表示します。 ・ 三角形で構成した区画 一連の三角形を表示します。区画内の各三角形は,次の三角形と一 辺を共有します。 ・ 四辺形メッシュ 一連の四辺形を生成します。 ・ 指標多角形 頂点を共有する一連の多角形を生成します。 ・ NURB Non-Uniform Rational B-spline。ユーザが指定した制御点と近 似則により,3 次元曲線または曲面を生成します。 (5) 属性 各出力機能には,出力の見え方を制御する属性の集合があります。属性 は,束表と呼ばれるグループで定義したり,個別に定義したりすることが できます。以下に,属性の一例を示します。 ・ 線種 点線や破線といった,線の種類を指定します。 ・ 線幅 線幅を指定します。 ・ 色 色の選択は,すでに定義されている色の中から選択するか,赤, 緑,青の輝度を指定することによって行ないます。 ・ 文字属性 文字の字間,字高,方向,配置,フォントの指定ができます。 (6) 入力機能 次に示す6 種類の入力装置に関して,同期および非同期の入力がサポー トされています。 ・ 位置入力 世界座標上の一点を得ます。 ・ 点列入力 世界座標上の連続した点を得ます。 ・ 実数値入力 実数値を得ます。 ・ 選択値入力 選択された整数値を得ます(選択値の文字列に漢字コードを指定で きます)。 ・ 文字列入力 文字列を得ます(かな漢字変換による日本語入力ができます)。 ・ ピック入力 ピック・パス,ピック識別子と要素番号を返します。 (7) ネーム・セット ネーム・セットという概念があります。個々の出力基本要素には,ネー ム・セットのメンバを割り当てることができます。これにより,強調性, 可視性,ピックできるかどうかを判定します。たとえば,設計図におい て,ボイラのパイプすべてにネーム・セットの1 メンバを割り当て,水 道管に別のメンバを割り当てることができます。これにより,これらのパ イプの集合をグループ単位で見えなくしたり,ピック可能にしたり,強調 したりすることができます。 (8) 問い合わせ機能 モジュール化された,装置独立性の高いアプリケーション・プログラムの 作成を支援するために,ワークステーションの特性,PHIGS の状態など の各種の情報を問い合わせる機能が提供されています。 (9) PHIGSアーカイブ・ファイル 作成したストラクチャのすべて,または一部を保存し,再利用するための アーカイブ・ファイルというインターフェイスが提供されています。アー カイブ・ファイルは,以下の目的のために使用されます。 ・ セッション間の図形情報の保存と読み出し ・ 図形情報を複数のアプリケーションで共有する ・ 関連しているグラフィックス以外の情報を格納する 1.3 ランタイム専用ライセンス PHIGS を使用したアプリケーションを動作させるために,日本語DEC PHIGS/VMS の実行時ルーチンのみが必要なユーザには,ランタイム専用ライセンスが提供 されます。ランタイム専用ライセンスでは,既存のアプリケーションは実行で きますが,新たにアプリケーションを開発することはできません。 2 必要なハードウェア 『日本語 DEC PHIGS/VMS V2.2 システム・サポート付加情報(SSA 25.T8.02-x)』 を参照してください。 3 必要なソフトウェア ・ 日本語DECwindows の搭載されたワークステーションの場合 - 日本語VMS オペレーティング・システム(および必要な日本語DECwindows の構成要素) 本製品に必須の,あるいはオプションとして使用できるソフトウェア製品 と,その適用バージョンについては,『日本語 DEC PHIGS/VMS システム・ サポート付加情報(SSA 25.T8.02-x)』を参照してください。 4 注文情報 最寄りの日本DEC の各支店/ 営業所にお問い合わせください。 5 ソフトウェア・ライセンス 本ソフトウェアは日本DEC 標準契約条項中のライセンス規定に基づいて提供さ れます。 日本DEC のライセンス条件とその方針についての詳細は,最寄りの日本DEC の各支店/ 営業所にお問い合わせください。 6 ライセンス管理機能 本ソフトウェアはVMS ライセンス管理機能(LMF)をサポートしています。ラ イセンス単位は,CPU の性能に応じて割り当てられます。 ライセンス管理機能についての詳細は,VMS Operating System の『Software Product Description(SPD 25.01.xx)』またはVMS Operating System のドキュメント・セットの中の『License Management Utility Manual』 を参照してください。 7 ソフトウェア製品サービス 日本DEC では,様々なサービス・オプションを提供しています。詳細について は,最寄りの日本DEC 各支店/ 営業所にお問い合わせください。 8 保証 本ソフトウェアについては,日本DEC 所定のソフトウェア保証基準に定められ た保証が提供されます。 1990 年12 月 AE-B308C-TE-JO